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KAKEHASHI SKY NEWS

2014.05.28 070


ビジネスコラム
個人と法人の仕事観、家庭観

私の父親は国家公務員で、陸上自衛隊に勤務していた。
父親の仕事、仕事への姿勢から、
現在の私自身の仕事観は、かなり大きな影響を受けている。

国家公務員は国民への奉仕が仕事であり、その任務が最優先だ。
災害発生時、友達の父親は早々に帰宅して側にいるのに、
我が家では常に父親は不在だった。
災害が起これば父親はいない。それが当然だと思っていた。

また、私が子どもの頃から、
父の部下たちがよく家に来て、遅くまで酒を飲んでいた。
個人より組織を優先する考え方、指揮系統の重要性、
上司と部下との関わり方などの父の仕事観を、
その晩酌の席で聞きながら、私は育った。

先日、埼玉の県立高校女性教師が我が子の入学式に出席し、
担任するクラスの入学式を欠席したという話題をご存じだろうか。
この行動に対する世の中の意見は、
批判もあったが、女性教師を容認する意見が非常に多かった。

また、状況は異なる例だが、
今月、読売巨人軍の原監督が父親の病床を見舞うため、
当日の試合の采配を託し、病院に向かったという報道を見た。
この原監督の行動も、世論は支持しているようだ。

我々よりも上の世代、父の世代、日本の高度成長期には、
「自己を犠牲にして会社に奉公する」のが美徳だったのだろう。
しかし、終身雇用制が崩壊し、ビジネスモデルが激変する社会で、
今や「会社」は絶対の存在ではないし、依存する先でもない。
少なくとも、会社が自分を一生守ってくれる存在にはなり得ない。
それが経済の変化であり、時代や世代の変化なのだ。

会社に対する考え方の変化は、
同時に、家族に対する考え方の変化だ。
そして時代の変化、年齢や環境によって、
個々人の会社や仕事に対する考え方も変化する。

今、子どもの入学式や卒業式に、
両親が揃って出席するケースが非常に増えている。
以前の私には、これは大きな違和感のあることで、
母親が出席できるなら父親が仕事を休んでまで行く必要はない。
そう考えていたが、自分の考えは変わってきているようだ。

私自身、最近は育児に関わる時間が増えている。
10年前も同じくらいの年の子どもを育てていたが、
当時と今とで、私の育児への関わり方の違いは大きい。
今は、子どもを保育園へ送ってから出勤することがよくある。
時間の調整ができる日ならば、極力自分が送るようにしている。
送りながら周囲を見ると、送ってきているのは父親の方が多い。
私に限らず、今は父親も育児のために仕事を調整するのだ。

当社には育児休業後に復帰している女性社員が何名もいるが、
保育園の送り迎えができるように時短勤務をしている社員たちが
周囲に気を使ってストレスになっていないかと気遣っている。
しかし昔の私にそんな意識は全くなかった。
今思えば、育児への配慮の足らない経営者だったと思う。

経営者や上司が育児期の子どもを抱えている場合はともかく、
子どもの年齢がその段階を既に通り越している場合、
その大変さを理解するのはなかなか難しい。
しかし、これから一層人材の獲得が困難になるこの時代、
育児への協力体制は、会社の人材計画の一部と言えるだろう。

働きたくても復帰できていない女性たちは、
言うまでもなく、潜在的な優秀人材の市場だ。
若年労働者の不足や外国人労働者の受入れを考える前に、
女性の戦力化、復職支援を日本社会全体で考えるべきだと思う。

そして、企業として、経営者として私たちがすべきことは、
受け入る側、企業としての仕事観を変えることだ。

社会、経済、時代の変化とともに、
働く個人の家族観は変化し、伴って仕事観も変化している。
組織を動かす立場にある我々経営層、人事関係者と、
法人としての家庭観、仕事観を変化させることこそが、
採用のため、社員のための環境整備なのではないだろうか。



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執筆
カケハシ スカイソリューションズ
代表取締役 中川 智尚


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