今年度、2015卒の新卒採用が佳境を迎えている。
今は企業側の積極的な採用姿勢が顕著であるため、
それに引っ張られる形で、学生の活動も例年以上に活発だ。
景気の先行き期待感から、
加熱気味と言える中途採用市場での人材獲得の次の段階として、
企業の人事部門の目が新卒採用市場に向き、
そこに注力し始めたのものも当然の流れである。
新卒と中途の違いは「仕事経験の有無」という一点だ。
経験がないだけで、新卒であっても仕事のできる人材は
確実に存在する。
だが、何をもって「仕事のできる人材」かは会社によって違う。
会社ごとのビジネスモデル、成長ステージはそれぞれで、
定義するならば、「その会社で利益貢献できる人材」だ。
しかし「仕事ができる」という評価は、
その企業で活躍できるかどうかであり、絶対的な評価ではない。
環境によってその人材が成果(利益)を出せるかどうかは、
大きく変わって当たり前だ。
例えば、有名大学から超大手企業に入社し、
エリートコースを走るトップクラスの人材といえど、
まったく状況の異なる中小企業で
同じように活躍するのは非常に難しい。
所属する組織が変わるということは、
会社の力と個人の力が複合的に生み出す信用力や商品力、
もちろん資金力も含め、あらゆる条件が変わるということだ。
同じように結果を出すには、環境の変化に適応する時間、
つまり仕事ができるようになるための時間が相当必要だと思う。
では、自社で仕事のできる人材を採用するために、
経営者は何から考えはじめるべきなのだろうか。
まず、採用戦略は経営戦略とリンクしていなければならない。
経営戦略を検討するフレームワークのひとつに
「アンゾフの事業拡大マトリクス」というものがある。
縦軸を「市場」、横軸を「製品」として、
それぞれ新規・既存の区分で4象限マトリクスにするものだ。
このフレームワークに沿って考えると、例えば当社では、
短中期的に好調と判断できる新卒・中途採用市場が、
当社商品軸での既存製品のゾーンに該当する。
この象限に重点をおき、
同市場で既存商品を売る戦略の強化(市場浸透戦略)と、
同市場に新製品を導入する製品開発戦略の2つが、
重点戦略として位置づけられる。
採用市場全体が売り手市場の方向に向かっていることで、
マーケットの需要が先行している状況にあるため、
市場の啓蒙活動には比較的パワーがかからないと判断できる。
そうなると、当社が今売上を伸ばすための人材戦略では、
営業経験があり、コミュニケーション力が高い人材を、
既存市場にいち早く、より多く導入することに比重が置かれる。
まずこの象限で仕事のできる人材の獲得を中途採用ですすめ、
並行して、その先のマーケットをとらえる視点を持つ
若く頭のいい人材を新卒採用で獲得したいと考えるのが、
当社の現在の採用戦略の基本となる。
この基本方針から具体的な採用計画を立案するのに大事なのは、
当社にとっての「頭のいい人材」を採用するために
どういうアプローチをするのかということだ。
頭がいいと判断するための資質にも幾つかの種類がある。
もちろん新市場で活躍する将来的に必要な人材はほしいが、
そのためには会社のレベルを上げていくことが必須となる。
だからこそ、現時点で実行するべき採用戦略は
今を基準としたターゲットへのアプローチでなければならない。
仕事のできる人材を一般論で論じることは、やはり難しい。
自社にとって本当に利益貢献できる人材の要件、資質とは何か。
この自社の市場特性と商品特性と著しく関連する要件について、
経営者は常に思考をめぐらせていなければならないのだ。
求める採用とは何か。その採用を実現するために、
どんな人材に、どんなアプローチをするのか。
最適な採用戦略とはいったい何なのか。
一経営者として、採用事業者として、慎重に考えたいと思う。
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