アベノミクスによる円安効果で、訪日外国人旅行が急増している。
日本政府観光局(JNTO)の統計によると、
2013年7月の月間訪日外国人数は初めて100万人の大台を突破した。
特徴的なのは、訪日する中国人数は減少傾向にあり、
インドネシア、タイ、ベトナムなど
ASEAN諸国からの旅行者が急速に伸びているということだ。
これはASEAN諸国民の経済力が上がっているということであり、
ASEANからの訪日がさらに増えれば、
政府が目標とする年間1000万人を今年中に達成しそうな勢いだ。
ASEANの中でも、旅行者だけでなく留学数も含めた訪日者数が
最も伸びているのがベトナムである。
先週、そのベトナムの主要都市であるホーチミンへ行ってきた。
現地日系企業からお聞きした最近のベトナム事情をお伝えしたい。
昨今ベトナムは、アジアで事業展開する日本企業の中で、
チャイナプラスワンとして、
チャイナリスクのヘッジ先として注目度が高まり、
ASEANの中での相対的ポジションが上がってきている。
それはなぜなのか。
理由は大きく3つあると感じた。
まず、マーケットの成長性がある。
ベトナムの実質経済成長率はASEAN10か国中4位、
一人当たりGDPは7位。
(参考:一人当たりGDP8位以下はラオス、カンボジア、ミャンマー)
政府発表の人口はこの11月に9000万人を突破した。
人口ピラミッドが1960年ごろの日本と酷似しており、
労働人口=購買層と考えると、経済成長期に入ったといえる。
現地の流通事情を見てみると、
トラデショナルトレードと言われる家族経営商店が87%を占め、
モダントレードと言われる地場の大手企業や外資企業による流通は
未だ13%に過ぎない。
また、あらゆる取引の現場に、
社会主義国によく見られる賄賂による商習慣が色濃く残る。
この賄賂が問題視され始めていることも、発展のひとつだろう。
次に、市場への参入障壁の低さだ。
ベトナム最大の新聞社で、その発行部数は50万部程度。
日本の読売新聞が1000万部を突破している事実と比べると、
国民のほとんどは新聞を読む習慣など無いことがわかる。
新聞や雑誌という紙媒体の広告インフラはまだまだ未発達だが、
携帯電話の普及率は既に高い。
ベトナムでの広報手段としてTVにつづく媒体はやはりWEBである。
また、社会システムが未発達な分、個人依存度が非常に高い。
それゆえ、大資本を投下したところで市場を席巻するのは難しく、
一方で、いいネットワークといい人材を獲得できれば、
資金力のない中小企業にも大きなチャンスのある市場と言える。
政治は安定しているが、法律はまだまだ曖昧な部分も多く、
締め付けはそんなに強くない共産主義というのが現在の印象だ。
最後に、国民性である。
ベトナム人は真面目で勤勉で、素直で素朴だ。
器用さや組織への従順さといった性質が日本人とよく似ている。
また、親日家が多く、両国に領土問題は存在しない。
弊社でも1年前、ベトナム人技術者を新卒と既卒で2名採用した。
すでに日本の風土や組織に慣れ親しんでおり、
彼らの存在があることで、私自身がベトナムという国を
さらに身近に感じるようになった。
今のベトナムは、
中国に変わる日本企業の生産拠点として、
これからモダントレードが拡大する有望なマーケットとして、
さらにASEAN6億人への発信基地として、
有力な投資先となる要素が集結したおもしろい国と言える。
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