2012年9月に発生した尖閣諸島問題をきっかけに、
日本企業の中国進出マインドは急激にしぼんできている。
中国は経済の急成長により、購買力が上昇し、
相変わらずマーケットは拡大しているが、
同時に人件費は高騰し、現地拠点の経費は増えつづけており、
もはや製造拠点開設場所としてのうま味はないのだ。
中国からの工場撤退は、今後も加速するのだろう。
代わりに今、ベトナム、カンボジア、ミヤンマーなどの
ASEAN諸国への進出意欲は相当なハイペースで高まっている。
弊社では毎年、中国・上海で、
北京大、復旦大などのトップレベルの中国人大学生を集め、
就職イベントを開催している。今年も来月11月に開催予定だ。
この中国イベントに参加する数百人の学生たちは、
みな日本語を勉強しており、日本での就職を希望している。
そのため一般的なイメージよりも日本が好きで、マナーもいい。
英語のレベルも日本の学生と比べて格段に高いのが特徴だ。
私は毎年ここで何百人もの中国人学生と会い、
その中から選考を進め、社員として雇用してきた。
その経験から中国人の共通点を挙げると、
・男女の意識の違いは少なく、女性は結婚後も仕事を続ける
・向上心、独立心が強く、負けず嫌い
・プロセスではなく、圧倒的に結果を重視する
・個人主義で、自己主張が強い
・ルーチンよりもとにかく新しいことを好む
などがある。
文化も価値観も違う彼ら彼女らの特徴を、
日本人と比べて云々言いたいわけではない。
中国人は、目標と責任を持たせ、ある程度の仕事を任せれば、
非常に高いパフォーマンスを発揮する人材だということだ。
この特徴を認識すれば、より有効に中国人材を活用できる。
そしてもうひとつ、日本人にはない中国人のビジネス力がある。
それは、アジア諸国の人口に占める華人の割合から見てとれる。
以下は、各国の人口に占める華人の割合だ。
複数の統計データを引用したため現実とは差異があるだろうが、
大枠をイメージするために参照いただきたい。
・シンガポール:77.7%(413/531万人)
・タイ:14.0%(923/6,593万人)
・カンボジア:3.6%(53/1,470万人)
・ミャンマー:3.6%(229/6,367万人)
・フィリピン:1.5%(141/9,401万人)
・ベトナム:1.2%(108/8,970万人)
・日本:0.4%(48/1億2,781万人)
最近の日本国内、特に東京都心部を歩いていると、
交通機関の案内表示や看板に、中国語の併記をよく目にする。
もちろん中国人ビジネスマンに会う機会も多いが、
在日中国人の割合は予想以上に低く、このデータ内最低値だ。
一方、他の国はどの国にも中国人が万遍なく浸透している。
ASEAN経済を牽引するシンガポールはほとんどが中国人であり、
弊社が現地法人を持つカンボジアで見ても、
全人口は日本の1/10ながら、同数以上の中国人がいるのだ。
RCEP構想があるように、アジアの国境の垣根は益々低くなる。
近い将来RCEPが実現すれば、人口約34億人(世界の約半分)、
GDP約20兆ドル(世界全体の約3割)、
貿易総額10兆ドル(世界全体の約3割)の広域経済圏が出現する。
日本企業が今からASEANマーケットを狙うのであれば、
優秀で語学力にも長け、自己主張が得意な中国人材は、
アジアのどの国にも同民族のいるオールマイティな戦力として、
最適なのではないかと私は考えている。
中国人の国民性、強い個人主義をはじめとする積極的な資質は、
企業に受け入れるキャパシティさえあれば、
東アジアマーケットを開拓するパイオニア的な人材として、
日本人にはできない仕事をこなす貴重な戦力になるだろう。
ASEAN統合、RCEP実現の後までを見通した大きな視点でみれば、
中小企業にも、確実にマーケット変化への対応が求められる。
そのために外国人を採用し、日本の価値観や文化を理解させ、
自社事業を理解した海外業務向きの戦力として育成する。
こうした外国人材の活用は、そう遠くない将来、
あらゆる日本企業の人材計画に組み込まれていくに違いない。
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