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KAKEHASHI SKY NEWS

2013.06.26 048


ビジネスコラム
「中途採用者の定着率を高めるには。」

景気浮揚の期待感から、中途採用市場が活況を呈している。
中途採用市場はいま明らかな売り手市場となっており、
その採用上の問題点もよく耳にするようになってきた。
期待する応募者が来ないという募集時の課題が最も多いが、
たとえ採用できても期待通りには活躍しなかったり、
定着しづらいのが中途採用の大きな課題だ。
その理由と中途採用者の戦力化について考えてみたい。

企業にとって、採用の目的は人材という経営資源の獲得である。
しかし一口に採用と言っても、
新卒と中途とでは採用活動の目的が若干異なる。

中途採用は、即戦力の獲得を目指しておこなう。
売上をつくり、事業を発展させるための戦力補強が目的だ。
経営戦略の中でも採用は売上に直結する効果抜群の投資であり、
会社は人件費という経費と生み出す利益を天秤に掛け、
人件費<利益となることを期待し、中途採用に投資する。

対して新卒採用は、設備投資に近い。
会社の長期的な発展を視野に入れた中長期戦略だ。
新卒者の入社が売上や利益につながるまでには、
最低でも1年、平均的には2年から3年を要する。
これが投資効果回収までの所要時間であり、決して短くない。

だが、新卒採用には大きな副次効果がある。
企業文化の醸成、社員のロイヤリティ向上、
既存社員の士気向上、社内組織の活性化などがその代表格だ。
企業が新卒者に寛容な背景には、この組織力強化効果がある。

一方、中途採用者に対して、会社は厳格に「業績」を求める。
新卒には必須とされ、当然のように許される長い教育期間も、
中途の場合は要か不要が検討され、その期間にもシビアだ。
つまり会社は、何より雇用条件に見合う業績を求めるのだ。

私は、新卒であれ中途であれ、
人が能力を発揮するには、能力を発揮できる環境が必要だと思う。

業種・業界が同じでも、ビジネスモデルが同じとは限らない。
モデルは似ていたとしても、会社によって仕事の仕方は全く違う。
取扱う商品・サービスの単価や利益率だって、会社それぞれだ。
業種や職種のカテゴリで見れば経験者であったとしても、
入社直後からいきなり結果を出すのは誰だって不可能だろう。
仕事は、スキルや経験だけでこなすものではないからだ。

たとえ専門スキルが高くても、
その専門スキルを活かすには仕事をスムーズに進めるための
仕事遂行スキルを持っていなければならない。
では、その仕事遂行スキルとは何なのかと言うと、
環境に適応する柔軟性だ。
人間関係、新しい仕事の仕方を許容する寛容さ、そして素直さ。
つまり、中途採用者には柔軟性という能力を求めているのだ。
そしてそのOKラインのバーは、案外高いところにある。

よく、社員の紹介で入社した中途採用者は活躍しやすいと聞く。
それは紹介者である社員が事前に会社の詳細な情報を伝え、
「人間関係」や「社員の特徴」「会社が大事にしている価値観」
など、仕事遂行の必須情報を知った上で入社するからだ。
あるいは、転職のために情報を伝えるのではなく、
友人として話していた内容やその社員の仕事に対する姿勢が、
自社の社風・風土を表し、転職の動機となることもあるだろう。

会社が中途採用者に即戦力を望むのであれば、
入社時の研修内容をビジネスでの必要最低限にとどめず、
自社の仕事の進め方、職場の人間関係、上司との接し方など、
本来は入社後3ヶ月くらい経過してやっと気づくような環境情報を
早々に与える機会をつくるなどの対応が必要だ。
たとえば非公式の場を用意するなど、
1日でも早く職場に馴染みやすくする配慮が必要だと思う。

転職者は給料アップとキャリアアップを重視する。
そう一様に考えがちだが、入社後はそうではない。
中途で入社した本人がまず考えるのは、
自分がこの会社でどんな価値を発揮できるのか、
自分がこの会社で本当に必要とされているのか、ということだ。
この不安を解消するまでが教育期間だとすると、
新卒よりも中途の方が、その期間は短くなければならない。
中途採用者にこそ、特別な対応を準備すべきなのだ。

業績を上げる社員が定着するのではなく、
自分の存在価値を感じている社員が定着する。
さらに会社の方向性とリンクした自分の成長を実感できれば、
永く働きたいと思うようになるのではないだろうか。
社員が定着するかどうかは、
会社が本人に応じた環境を作れるかどうかにかかっている。



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執筆
カケハシ スカイソリューションズ
代表取締役 中川 智尚


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