新たな海外事業の可能性を探るため、
フィリピンのセブ島を視察した。
フィリピンは東シナ海に浮かぶ7,109の島からなる。
島の多さはインドネシアに次いで世界2位。
日本もまた6,800もの島からなる国であり、
フィリピン海上に日本との国境があるため、
あまり知られていないが、日本とフィリピンはお隣りの国である。
また個人的にも、フィリピンパブのおかげで、
以前からフィリピンは私にとって親しみ深い国だ。
フィリピンの人口は9,401万人（2010年)で日本より若干少ないが、
人口増加率は1.82％とASEANで最も高く、
2020年には日本を逆転すると言われる、人が資本の国である。
訪問したセブシティはマニラに次ぐフィリピン第二の都市だが、
マニラとセブは東京と大阪との関係とは違い、
経済規模感では、東京と那覇くらいの差異がある。
人件費の上昇も、マニラに比べるとセブはかなり抑えられている。
国民の海外での「出稼ぎ」はフィリピンの国策であり、
10人に1人は海外で働いていると言われている。
実際、現地の観光産業以外での外貨獲得は、
1,000万人もの海外出稼ぎ労働者からの仕送りに依存してきた。
出稼ぎ労働による本国送金額は、実にGDPの1割以上に達する。
このフィリピンの人材をどう日本で活用出来るか、
新たな「出稼ぎ」方法を考えるのが、今回の視察の目的だった。
まず注目したいのは、フィリピンの「英語」産業だ。
フィリピンの公用語は現地のフィリピノ語と英語で、
アジアでもっとも英語レベルが高い国だと言われる。
この英語力を産業に活用しているのがコールセンター誘致である。
現地人特有のフィリピン英語の癖を徹底的に矯正し、
きれいな発音の英語力を備えたオペレーターに育て上げている。
人口が多く、ホスピタリティのある国民性であることを背景に、
人材の質と量を担保しながら人件費も安く抑えられることで、
アップルなどアメリカを代表する企業のコールセンターの大半が
セブシティに移管されてきている。
コールセンター市場は約8,000億とも言われており、
フィリピンがその市場でシェアを拡大しているのだ。
そのコールセンター産業が活況である影響を受け、
セブには外国人向け英語学校が多数ある。
韓国人対象の詰め込み型で軍隊式の英語学校、
カレッジ風のちょっと柔らかい日本人向けタイプの学校、
企業経営者や幹部向けのビジネス英語の学校の3タイプを視察し、
英語を身につけるための語学留学であれば、
世界で最も費用対効果の高い場所がフィリピンだと実感した。
セブで働く日本人経営者から、フィリピン人の特徴は、
勤勉、楽観的、快楽的、明るい、家族思い、人がいい、上昇志向、
優しい…等であると聞いたが、
実際に接してみて私が感じたのは、女性のレベルの高さだ。
高学歴で教養があり、さらに少額の出費で家政婦を雇えるため、
小さな子供がいても安心して仕事に集中できる。
女性が社会進出しやすい、仕事をつづけやすい環境が、
フィリピンには整っているのだ。
すでに日本とフィリピンは経済連携協定（EPA）を結び、
フィリピン人看護師・介護士の受け入れを決めている。
しかし「日本語」試験が壁となり、
事実上、受け入れは閉ざされている。
日本国内の医療や介護の現場では深刻な人手不足が続いており、
今後も慢性的な人手不足となることは明らかだ。
にもかかわらず、日本はまだ、
外国人労働者の受け入れ問題に真正面から取り組んでいない、
ということだろう。
フィリピンの優秀な女性が日本の労働市場に入ってくることが、
両国にとってプラスであることは間違いない。
フィリピン人女性の優秀さ。
世界最高レベルの英語力と英語教育力。
日本の医療介護分野での人手不足。
国内の資格取得に必要な日本語力。
ここから、日本とフィリピンとの新たなカケハシとなる事業を、
考えていきたいと思う。
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