アベノミクスが騒がしい。
毎日多くのテレビや新聞に「アベノミクス」が登場する。
これだけ騒がれているのだ。
遅くとも数年以内に、我々は変化を体感することになるだろう。
私は経営者として、この経済変化を能動的に考えてみたい。
ここ数年、特にリーマンショック後の急速な円高で、
日本を代表する輸出型メーカーは大きな打撃を受けてきた。
円が高くなった理由は様々あるが、経済学的に見れば、
他国通貨より円の需要が相対的に高いから円高になるという、
実に単純な理由だ。
為替相場も需要と供給のバランスであり、
いま日本はアメリカやユーロ圏がそうしているように、
通貨の発行量を増やして、つまり円の供給量を増やしている。
実際、早くも円高は是正されつつある。
ここ数年の円高で強烈な打撃を受けた業種や会社がある一方、
同じ円高で大いに潤っている業種や会社もある。
晴れて潤う商売と雨が降って儲かる商売があるように、
円は安い方がいいのか、高い方がいいのかという、
正解を求めるような問題ではないのだ。
円安誘導政策によりもっとも恩恵を受ける代表業種は、
電気、自動車などの輸出型企業だ。
特にトヨタやソニーなどの世界的大企業にとっては
短期的には為替差益プラスであったし、中期的にみれば、
ここ数年後塵を拝してきた韓国メーカーとの競争力においても
かなり有利に働くことだろう。その影響で、
各企業の株価はもちろん日経平均株価も20%以上上がり、
金融機関の含み益も増えた。
だが、金融政策だけで景気がよくなるわけではない。
安倍首相は経済団体のトップに社員の給与を上げるよう要請した。
これは、2012年度決算で為替益が出る企業への要望として、
至極真っ当な話だと思う。
できることなら、安倍首相から大企業のトップに向けて、
積極的な正社員採用を要請していただけたら最高だった。
私は本気でそう思っている。
しかし、為替と株式市場の大きな動きの影響で、
大企業や金融機関の経営者心理が前向きに転じたことは、
日本経済にとって大きな意味がある。
よく言われることだが、景気とは「気」だからだ。
金融政策で刺激されたこのプラスの「気」が、
実体経済に反映されるまで、しばらくのタイムラグが発生する。
このタイムラグの間にプラスの気が実態あるプラスを生むよう、
我々が実体経済の中で努力しなければならない。
景気とは、我々の気であり、経済社会に流れる気である。
一人一人の経営者が今後の景気の好転を期待し、
一人一人がその経営姿勢を少し前向きに変えることで、
結果、日本の景気が上向く。
そう考える私が楽観的過ぎるのだろうか。
少なくとも私は、日本で会社を経営する経営者の1人として、
弊社に出来る三つの前向きな取り組みを始めたいと思っている。
1.雇用の拡大
正社員の採用を増やす。
13年度採用を計画数+1から2名とし、採用枠を拡大する。
弊社のような中小企業でも、計画+1名2名の増員であれば、
吸収できる範囲だろう。
2.投資の拡大
既存事業テコ入れに投資し、新規事業開発にも予算を使う。
利益を出すための経費削減には限界がある。
無駄な経費を増やすことなく、しかし確実に抑えながら、
将来に向けた投資を増資や借入によって積極的におこないたい。
3.賞与の拡大
基本給与は社員育成と直結するため慎重にならざるを得ないが、
短期間に業績を上げ、その利益の使い方を再考したい。
内部留保だけでなく、賞与として社員に還元したい。
従来の予算目標に+αの目標を設定し、
その達成を条件に賞与を上乗せしたいと思っている。
中長期的視点では、新しい産業、新しい商品を生まなければ、
本当の意味での日本経済復活はない。
そんなことは誰もがわかっている。
だが、短期的に刺激された‘好景気感’が必要なことも事実だ。
このアベノミクス的好景気感をただの感覚で終わらせず、
確実に日本社会の波にしていくことも、
この時代に経営を担う我々の責務なのではないだろうか。
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