私には2歳前の娘がいる。
生まれた時から娘の面倒を見てきたが、
最近、この娘の態度が非常に面倒くさい。
決して子どもの世話をすることが面倒くさいわけではない。
彼女の態度が面倒くさいのだ。
自我の目覚めなのだろうか。食べるもの、着るもの、
やりたいことに好みが出てきて、いちいち自己主張する。
こちらが褒めたり、おだてたりすることで、
やっと思い通りに動かすことができる。
そしてその面倒くささのレベルは、日々上がってきている。
娘の態度は面倒くさいのだが、
面倒くさいことが悪いことだとは思っていない。
「面倒くさい」をネットで検索してみると、
「手間が掛かったり、解決が容易でなくて煩わしいさま」とある。
つまり面倒くさい=余計な手間(時間)がかかる ということだ。
だいたい、世の中の「価値あるもの」には
必ず余計な、余計かもしれない「時間や手間」がかかっている。
「ひと仕事」した寿司ネタとか、
時間をかけて「仕込んだ」ワインとか、
芸術作品なんかは手間と時間だけでできているとも言える。
価値あるものを価値あるものにする過程には、
その面倒=手間と時間が不可欠なのだと言える。
人材も同じなのではないだろうか。
新入社員は、経営者にとっても先輩社員にとっても、
素直で可愛い存在だ。
可愛がっているうちに、その仕事は単純なものから、
だんだんスキルと経験を求められる仕事、考える仕事、
判断を要する仕事へとレベルアップしていく。
手間と時間をかけて、価値ある人材へと育成するのだ。
では、価値ある人材とはどのような人材なのか。
企業によってそれぞれだとは思うが、
私はそれが「面倒くさい人材」だと考えている。
「面倒くさい人材」とは、
1.自分の判断軸を持っている
2.私(経営者や上司)とは違う考え方を持っている
3.納得しないと動かない
4.しかし、動けば結果を残す
という人材である。
経営者や上司からみると、
すべての仕事でいちいち指示する必要のある人材は、
動かすのが楽な人材であって、優秀な人材とは言えない。
動かすのは面倒だが、納得すれば動き、
確実に結果を残す能力がある人材にこそ価値がある。
動けば結果を出すところに、
面倒くさい人材の真の価値があるのだ。
一方、ただ単に「面倒くさいだけ」の人材もいる。
議論好きで、とにかくなんでも反対するのが好きなタイプだ。
こういうタイプには手間と時間をかける価値はない。
「面倒くさい」理由が、結果を出すためではないからだ。
企業のスピード感を止める要素にもなってしまう。
そういう人材は組織から退場していただき、
活躍できる別のフィールドに移っていただくべきだと思う。
私は仕事上多くの経営者にお会いするが、
社長は「面倒くさい」タイプの人が圧倒的に多い。
むしろ、面倒くさくない社長など、
この世の中にはいないのではないかと思う。
特に中小企業経営者は性格的にワンマンなタイプが多いためか、
自分の指示に素直で従順な人材を求めがちだ。
採用時点で既に面倒くさい人材を採用することは滅多にないし、
採用する必要もないだろう。
大事なのは、面倒くさくなる素質のある人材を採用することと、
ただ単に面倒くさいだけの人材と間違えないことだ。
企業が成長していくためには、
「素直な人材」を採用し、「面倒くさい人材」に育て、
それを許容し、活用しなければならないのではないだろうか。
私は、面倒くさい人材を避けずにどれだけ許容できるかで、
企業の成長が決定すると言っても過言ではないとさえ思っている。
面倒くさい人材を戦力化していくのは、企業の宿命なのだ。
社内を見渡して、うちには素直な人材しかいないと感じたなら、
それは組織の成長に危険信号が灯った合図なのかもしれない。
コラムへのご感想・ご意見など、ぜひお聞かせください。
→letter@kakehashi-skysol.co.jp