2023/6/14 vol.287 KAKEHASHI SKY NEWSは、第二・第四水曜日配信 “人的資本経営とは?” 青山学院大学経営学部教授 山本 寛氏 近年、人的資本関連の情報開示の義務化等から、大企業を中心に人的資本経営が注目されています。「人的資本」とは、仕事をする上で必要となるスキル、知識などの総称であり、「雇用主に対し自身の価値を高めるような専門的な価値の蓄積」を意味します。つまり、組織で評価されるような専門性の高い知識やスキルなどのことです。 1.自社の人事戦略が明確化されること
情報開示に向けた過程で、社員の人的資本が組織の業績や成長にどの程度寄与しているのかを客観的に把握できます。同時に自社の人的な面での強みや弱みが可視化され、他社との比較が可能になるため、企業として競争優位性の確立につながります。 2.投資家等のステークホルダーに自社の人事戦略への理解を深めてもらえること
自社の経営戦略との連動を図る過程で、経営戦略に合った社員像が明確化されます。さらに、現状と目指すべき姿のギャップを定量的に把握する中で、求める人材を獲得・育成する施策の実施、成果を明示する指標や目標の設定などがおこなわれ、その結果として企業価値の向上が見込めます。 1.優先順位の策定
大企業と比べ、人的資本に投下できる予算等に限界があることを考慮すると、人事戦略に沿って施策の優先順位を決める必要があります。パーソル総合研究所の調査によると、人的資本情報開示で重視する要素として、「優秀人材の採用実績の増加」、「他社の動向」、「役員層の意識改革」、「従業員エンゲージメントの向上」、「新卒採用エントリー数の増加」、「株価への反映」の順になっています。例えば、離職者が多いことが大きな課題で人事戦略として社員のリテンション(定着)を重視している企業では、従業員エンゲージメントの向上を優先するなどの施策が考えられます。 2.経営者の意欲と行動の重要性
中小企業では、経営戦略の策定に積極的に参画しながら、人事業務を統括するCHRO(最高人事責任者)など、職位を設けていない企業も多く見られます。その場合、経営トップの意欲と行動が重要です。トップ自身が社員に働きかけ、自社の理念・ビジョンや社員が目指すべき姿を発信し、社員に理解してもらうことが、人的資本経営の推進につながります。 Pick up Seminar Articles |