管理職が求められている役割
現代の組織は、コロナ禍によるテレワークの普及など、社員の働き方の変化を余儀なくされてきました。それに伴い、管理職は何をすべきかが問われています。
コロナ禍いかんに関わらず、管理職に求められているのは、相手に合わせた励まし、教育指導、部下の状態を見ながらの権限委譲の三つです。これらはコミュニケーションと関連し、部下にプラスの影響を与えることが目的となっています。そこで本稿では、リモート下における管理職の役割を、部下のエンゲージメント向上の視点から検討します。
リモート下での部下のエンゲージメントの向上と管理職の役割
エンゲージメントとは一般に、会社の成長と自身の成長を結び付け、会社が実現しようとしている戦略・目標に向け、自らの力を発揮しようとする自発的な意欲ととらえられます。しかし2017年のギャラップ社の調査によると、わが国における組織のエンゲージメントは、国際的に非常に低いことが示されました。さらに、リモート下のアンケート結果から、テレワーク時のデメリットとして「上司・部下・同僚とのコミュニケーションが不足」、「職場メンバーと議論・ディスカッションがしにくい」という声がみられます(※1)。同様に、「仕事のプロセスや成果が適正に評価されないのではという不安」が高まっている人が多い結果もみられました(※2)。これらはリモート下でのコミュニケーション不足、それを起因とする評価への不安の表れであり、エンゲージメントの低下に結びつくと考えられます。
そうした状況での管理職の役割とは何なのでしょうか。エンゲージメント向上のための取組みについての国際比較調査の結果、わが国の組織では、第一位が権限委譲、第二位が業務量とワークライフバランスへの配慮でした(※3)。両者とも管理職の役割が大きいことがわかります。また、誰の評価で評価されたと感じるかを聞いた調査では、同僚、顧客、部下よりも圧倒的に上司からの評価が重要でした(※4)。実際、株式会社小松製作所では、管理職がエンゲージメントを高める方法を知るため、管理職層に、信頼、モチベーション、チームワークや権限委譲等を効果的に高める研修を実施しました。その結果、エンゲージメントが高い社員の比率が半年で33%から70%へ向上したのです(※5)。このように、エンゲージメント向上には、管理職の資質向上も求められます。
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リモート下での部下との面談における留意点
管理職は部下との面談において、特に雰囲気が伝わりにくいリモート下で留意すべき点があります。仕事上のコミュニケーションの質の向上は以下の過程をたどります。すなわち、儀礼的な会話を中心とした表面的な関係(会話:アイスブレイク等)から比較的簡易な仕事の割り当て、それに部下が成功した場合、より困難な仕事の割り当て、それへの成功といった過程です。これが効果的な権限委譲であり、one on one meetingの目標といえます。そのためには、第一に、話す内容がないからといって「1週間前依頼した仕事はどうなった」等仕事の進捗に関する話ばかりではエンゲージメントにプラスになりません。部下の話を聴くことに徹底すべきです。第二に、仕事の結果だけでなく、リモート下で見えにくい「頑張り」、すなわちプロセスや行動への評価を意識的におこなう必要があります。
リモート下でも現代の若手社員が重視するのは自身の成長です。エンゲージメントを高め、成長実感をもってもらうには以上のようなコミュニケーション上の配慮が管理職に求められるのです。
出典
※1:リクルートマネジメントソリューションズ 2020 「テレワーク緊急実態調査」
※2:日経リサーチ 2020 「コロナ禍で広がるテレワーク~働き方改革にどう影響」
※3:Towers Watson 2014 “Global Workforce Study.”
※4:Unipos 2018「感謝と仕事に関する調査~」
※5:White Paper: “Increasing Employee Engagement at Komatsu.”