SNSが登場して約10年。世界中の人が当たり前のようにオンラインで接続している世の中になり、私たちもSNS10年選手として、以前よりも強い情報リテラシーを持つようになりました。かつては企業から発信されるテレビCM等の広告は大きな影響力を持っていましたが、今や情報を意図的に操作できるマーケティングメッセージよりも、友人や家族、あるいはSNSコミュニティでシェアされる情報の方がはるかに信頼できるという人も少なくありません。「作り込まれたキャッチコピー」より「飾らない口コミでの推奨」の方が人を動かす力を持っている、そんな時代です。
マーケティングの神様と言われているフィリップ・コトラー氏が2017年に出版した「マーケティング4.0」でも、「マーケティング4.0の究極の目標は、顧客を認知から推奨に進ませることである」と書かれてあります。ここでいう推奨とはまさに口コミのことであり、出版から4年ほど経過した今も本の内容が古くなる気配はありません。むしろ、採用マーケティングという分野においては、今まさにそのトレンドが押し寄せている最中ではないかとさえ思います。そのことを象徴しているのが、新卒採用における就職サイト新勢力の台頭です。
「ONE CAREER(ワンキャリア)」という就職サイトをご存知でしょうか?
「ONE CAREER」は、企業の採用活動に関する口コミを40万件以上集めている就職サイトですが、注目すべきは就活生からの支持率です。つい最近まで、就活サイトといえば、大手ナビサイトの二強時代が続いていましたが、今ではその勢力図はすっかり変わり、どの調査でも「ONE CAREER」が就活生利用率ランキングの上位に食い込むようになりました。まさに、採用マーケティングにおいても、「推奨」が重要なキーワードになってきているということでしょう。
就活生から推奨を勝ち取るための5つのポイント
「口コミによる推奨の獲得」を目標として採用マーケティングをおこなう際に考えるべきポイントを5つ紹介します。
1:内定者時期に提供する体験の設計
内定者は、就活生の中で最も会社に対するロイヤルティが高く、最も推奨を発生させやすい貴重な存在です。内定者時期に優良な体験を提供し、ポジティブな印象を保つことは、次の世代の採用に直結するのです。
2:学生と接するリクルーターのトレーニング
選考不合格者や辞退者からも「よい会社だった」と推奨される会社を目指すためにも、採用活動に参加するリクルーターのスキルやモラルの強化が必須です。特に最近はオンラインでの採用活動が増えたことで、面接現場などの不透明化が進んでいます。個人の選考官が遅刻したり、態度が悪かったりが原因で悪評が立ち、採用ブランドを毀損しているケースも見受けられます。十分に注意が必要です。
3:本選考以外(インターンシップ等)の接点の充実化
「本選考は受けなかったけど、ここのインターンシップで成長させてもらった」などと、本選考以外で評価を得ることも、高いロイヤルティと強い推奨の獲得に繋がります。そのためにも、コンテンツのクオリティを妥協してはなりません。
4:推奨を呼ぶコミュニケーションの設計
悪い口コミに比べて、推奨の口コミは自然発生しにくいのが特徴です。YouTuberが念入りに「高評価お願いします」とお願いするように、推奨を促進させるためのコミュニケーション設計が必要です。
5:人事のパーソナルブランディング
上記の推奨を促進させるためのコミュニケーションをスムーズに成り立たせるのは、人事のパーソナルブランディング、簡単にいうと「キャラクター」です。親近感を育み、「●●さんのためなら・・・」と言ってもらえるような高い関係値は推奨を発生させる強力なトリガーになります。
さいごに
SNS10年選手たちが集う現代において、私たちは改めて就活生に対する接し方を考え直す必要があるのでしょう。
就活生を、「企業にふるいにかけられてしまう弱者」として接するのではなく、「未来の同僚を集客してくれるマーケティングパートナー」として、長期的な視野とともに接することが求められているのです。