お笑い芸人キングコングの西野亮廣さんが製作総指揮をとった「映画 えんとつ町のプペル」が昨年のクリスマスに公開され、今もなお継続してヒットしています。私も観に行きましたが、涙を流さずにはいられない作品で、終わった後もなかなか席を立ち上がることができませんでした。さて中身の話はほどほどにしておきながら、私が今回フォーカスを当てたいのは、コロナ禍においても影響力を高め続け、多くの人を巻き込むことで映画を完成させた西野さんの求心力です。

まず注目すべき点は、西野さんの求心力の源が「応援」であるということです。
「映画 えんとつ町のプペル」を完成させるにあたって、彼は数多くのクリエイターや、自身が運営するオンラインサロンのメンバーや、会社のインターン生を巻き込みました。しかし彼は特別な高待遇で人を雇っているわけではありません。彼を応援したくて、一緒に面白いことをやりたい人が集まってきているのです。ちなみに、彼のオンラインサロンの会員数は7万人を超え、その規模は日本最大級。いま日本で最も応援されている一人と言っても過言ではありません。

一方で、多くの会社はコロナ襲来によりオンライン化を迫られ、求心力ではなく、遠心力が働きやすい状況になっているかと思われます。そんな状況下においても、コロナに負けず、成長を見据えた企業活動をおこなうためには、やはり社員一人ひとりのエンゲージメントを高めることが重要なのではないでしょうか。
となれば、西野さんが応援される体質を解明すれば、いくらかコロナ禍におけるエンゲージメントの維持向上のためのヒントになるのではないかと考えます。私なりに彼の応援される体質を以下の３つに分解してみました。

１：ワクワクする大きな夢
２：有言実行の信頼感
３：メンバーを主役にする巻き込み方

まず、西野さんはエンタメ業界でディズニーを超えるという、思わずワクワクしてしまう大きな夢を語っています。もし仮に「有名になりたい！」などと、利己的で、すでに叶っているような夢を発信していたら、今ほどの求心力を得ることはできなかったでしょう。応援されるためには、「共感されるベクトル」と「応援する余地」を示す必要があるのです。

とはいえ、夢を語るだけなら誰にでもできます。そこに必要なのは「本当にやれるのか？」という疑問に対するアンサーです。彼は夢のために誰よりも行動し、思考し、そのプロセスを様々なメディアで毎日のように発信しています。結果として、「口だけではなく、有言実行である信頼感」を得ることができています。
さらにオンラインサロンやクラウドファンディングを通じて、ファンを、野望を叶えるための仲間として巻き込んでいます。「ディズニーを超える過程を見たい傍観者」に対して、「一緒にディズニーを超える主役」の役割を付与することで、よりロイヤリティの強い応援者を生み出しているのです。

ここから学べることは、まず前提として待遇に頼らずとも、応援されることで求心力が高まる可能性があるということ、そして、応援する気持ちはコロナ禍に関わらず醸成できるという点です。

その上で、応援される体質の作り方を会社と従業員の関係に落とし込むと、以下のようになるでしょう。
１：会社のリーダーたちが達成しがいのある具体的なビジョンを語り、共感を呼ぶこと
２：ビジョンに向かって行動している事実や進捗を都度発信し行動への信頼感を得ること
３：従業員を傍観者とせず、ビジョンを達成させる主人公としての役割を与えること

「従業員からの支持を集め、求心力を高める」という構図に違和感を覚える方も少なくないと思います。しかし、社会や人の価値観は目まぐるしいスピードで変化しており、コロナでさらに拍車がかかっている状況です。そんな変化の時代だからこそ、変化に対応できているモデルを調査し、ヒントを得て、柔軟に組織の価値観を変化させていくこともまた求められているのではないでしょうか。