お互いをよく理解しているはずの家族や夫婦でも、対話を怠れば関係性にちょっとした不具合が生じる。そんな経験はないでしょうか？

会社の同僚は、仕事を目的に集まった仲間であり、価値観や人生設計は様々です。これまでは必要に応じて、日常会話を通してお互いの状況を把握することができましたが、コロナの影響やリモート化が進み対話がしにくくなったと感じます。

私は仕事柄、経営幹部の皆様と合宿研修をする機会が多くあります。「オンラインやリモートの時代に、わざわざアナログな合宿？」と思うかもしれませんが、実は経営者の皆様から合宿研修の依頼がこの状況下で増えています。

その意図は、時間を共有することで懇親を図ること。サラリーマン感覚を超えて、自分事として経営参画する真の幹部を作るための意思疎通の場や、縦割り意識をなくし全社最適に向けて自発的に動く組織をつくるため、とその役割は様々です。

合宿では、いくつかのフレームを使って、自社の事業やミッション、顧客への提供価値、外部環境等様々な観点から、「目指す姿」と「現状」を経営者として見つめ、丁寧な議論を行います。

合宿成功にはいくつかのポイントがあります。

１つ目は、合宿におけるグランドルールを自分たちで決め、守ることです。

例えば、
・主語は「私たち」（「私」「自部署」ではなく）
・「否定」「評価」するのではなく「受容」と「提案」
・議論の上、必ず結論を出すこと　等、

合宿研修を自分事と捉え、議論を進められるかどうかで、結論や合意の質は全く異なります。会社の未来を語る上で、自らの保身が優先すれば、議論は成立しないのは言うまでもありません。普段、自部署を懸命に考えているため、保身とは言わずとも自部署の利益を優先するのは当たり前のことですが、合宿には経営幹部として参加している意識を持ち続け、全社視点で俯瞰して考えることが、幹部としてトレーニングの一つになるのは間違いありません。

2つ目は、事前課題の提出と読み込みです。

事前課題について考えてくるだけでなく、参加者全員の回答を予め読み込み、自分なりに熟考してくることです。これができる人数と解釈の質が、幹部のレベルだと言っても過言ではない、と多くの企業を見ていて感じます。

しっかりとした事前準備ができるようになると会議の進行スピードがあがり、時間をかけるべき部分に集中することができるので、議論の質が向上するのです。

3つ目は、役割と期限の設定です。

判断が難しい事案やジレンマを抱える議論もある中で、最後は会社の発展のために決断し、具体的に何をするか、役割と期限を設定することが肝心です。

当たり前のことだと思うかもしれませんが、実はこれが一番難しいのです。推進してみたものの、立ち消えたり、改善に近づいたところで、何となく終了したり、ということは多くあります。大切なのは、結果が出るまでプロセスを管理することです。

経営環境はいつでも予測不能ですが、コロナでさらに混沌とし、必然的に経営戦略を見直さざるを得ない状況です。組織全体が一体感を持って柔軟に対応しなければなりません。そのためには、経営者と幹部が一枚岩になり、強い信頼関係のもと旗を振っていく必要があります。幹部という力のある人たちが一体化したときのパワーは相当なもので、企業を突き動かすエンジンになりうると、私は常々体感しています。

コロナ禍の中でも、いくらでもやりようはあります。こんな状況だからこそ、丁寧な議論を実施し、経営者と幹部を起点に、より強固な信頼関係を築いていく必要があるのだと思います。