いまや「ソーシャル・ディスタンス」という言葉を目にしない日はなくなりました。
なぜソーシャル?と、当初思ったのですが、「ソーシャル」という言葉には社交という意味があり、「集まりから距離を置きましょう」という意味合いで「ソーシャル・ディスタンス」を使うようになったのだそうです。ちなみに世界的にはphysical distancingという言葉が主流になってきています。ネットやSNSの普及もあり、大事な人とのつながりは持ちながら、適切な距離を。という願いが込められているとのことです。日本語で言うと「間合い」がぴったりくる表現かもしれません。
さて、この間合いについて、人は悩みます。カタチが見えず、また関係性によってその在り方が変わるため、“適切な間合い”を見出すことは難しいのだと思います。
私は中小企業の社長と話をする機会が多いのですが、本音を語る場面で出てくる悩みは、資金繰りと幹部社員に関する話題がほとんどです。
信頼できる幹部がいない。意図が正しく伝わらない。育たない。辞めた…。関係性が大切だと理解しているものの、現実には「間合い」がうまくとれていないことが多いのだと感じます。
よく「阿吽の呼吸」という言葉が使われますが、これは「二人以上が一緒にある物事をするときに相互の気持ちの一致することやその微妙なタイミング、またその間合いを巧みにつかむこと」という意味だそうです。
現実を見つめると、社長と幹部の間に、はじめから「阿吽の呼吸」があるわけではないことがよくわかります。社長と幹部の適切な間合いを築くために大切なことは多々ありますが、ここでは特に重視していただきたい「変化の共有」「相互の人生への関心と理解」「雑談の効能」の3つの要素についてお話します。
1. 変化の共有
大前提として、人は変わります。社長の考えが変わることもあれば、幹部の事情が変わることもあります。市場の動向が変わることもあれば、現場の課題が変わることもあります。大切なのは、変化を共有することです。いざという時に「阿吽の呼吸」で判断をするために、自身の変化や視界の変化について会話をすることが重要です。社長と幹部としての関係が長いほど、意外に難しいポイントなのかもしれません。
2. 相互の人生への関心と理解
大きな決断や経営判断には、その人の価値観や人生観が如実に表れます。幹部が社長の決断に対して、背景や理由も含めて正しく理解するには、社長の人生に関心を寄せ、理解しようと努めることが求められるのだと思います。逆も然りです。幹部が実現したいこと、仕事におけるこだわりを理解しようと思えば、社長は幹部の人生に関心を示し、理解しようと努めることが求められるのだと思います。適切な間合いがとれている社長・幹部と、そうでないケースの最も大きな違いかもしれません。
3. 雑談の効能
お笑いの世界でもコンビの関係が長くなれば、楽屋は別々で、プライベートで話すことも減り、不仲になるという話をテレビなどで聞きますが、社長と幹部も関係が長くなり、互いに「阿吽の呼吸」を求めるあまり、コミュニケーションが重要な業務報告のみに終始すると、関係性が硬直化していきます。ここで意外な効能を発揮するのが雑談です。業務に直接関係のない話、社内であった笑い話、プライベートな話など、一見、生産性のない雑談をすることで会話のキッカケが生まれ、互いの興味関心に気付くキッカケにもなり得るのです。
お気付きの方も多いと思いますが、上記の3つの要素はそれぞれが関連しあっています。と同時に、社長と幹部のどちらか一方だけが行動を変えることが難しいテーマでもあります。しかし、この3つのポイントに変化が起きれば、自然と関係性が変化し、社長と幹部の適切な間合いをつかむチャンスが生まれることは間違いないと私は思います。
社長と幹部の適切な間合い。自社の場合は、どうしたらいいのか。興味がある社長や幹部の方がいらっしゃったら、ぜひご相談ください。きっと、お役に立つお話ができると思います。