2019/2/13 vol.183
BUSINESS COLUMN
“VUCA時代に立ち向かう組織をつくるための3つのポイント”
『3.4兆円』。この数字が何かわかりますか?
これは中国最大のECサイト「アリババ」が2018年11月11日のたった1日で記録した取扱高です。日本最大手のECサイト楽天市場が2017年の1年間で約3.4兆円の取扱高なので、アリババの企業力にはただただ驚かされます。しかも、アリババは1999年に設立した企業。20年前にアリババがこれだけの世界的企業へと成長するとは予想もできませんでした。
アリババだけではありません。今でこそ誰もが知るFacebookやAmazon、Googleといった世界的企業はいずれも30年以内に誕生した企業です。
一方で、米国で125年の歴史を持つ小売大手のシアーズ・ホールディングスが破産したり、日本でも有名大手企業が経営危機に陥ったりと、企業の先行きが良くも悪くも見えづらい時代になったと言えます。
こういった現代のカオス化した環境は昨今、「VUCA時代※」と表されます。
この時代では新たな技術革新が人の仕事を奪うこともあれば、逆に新たな仕事を生み出すこともあります。インターネットの普及によって流行の移り変わり(サイクル)も非常に短くなっているのもVUCA時代の特徴。また、グローバル化の波は人々やサービスの交流を生み出す一方で、一見関係のない出来事が回り回って思わぬ影響を与えることもあるでしょう。
今の当たり前が、5年後・10年後には存在すらなくなってしまう“不確実”な世の中で、企業や働く社員はどのように対応していかなければならないのでしょうか。私は3つのポイントがあると考えています。
まず1つ目に『ビジョン設定』です。
「今さらビジョンなんて…」と思う方もいるかもしれませんが、企業ビジョンだけを意味するわけではありません。ここでいうビジョンとは、社員一人ひとりが持つ夢や目標であり、本人が目指す方向、座標軸を示しています。不確実で誰も先を予想ができない時代だからこそ、自らが考え、納得する道筋を描き、モチベートし続けることが大切なのです。
その上で企業は、社員がどのようなビジョンを持って働いているのか、社員に存在価値をどのように発揮させるのかを考えなければなりません。スキルや経験の均一化を図るのではなく、個々を活かせる環境づくりが求められます。
では、どのように個々を活かせる環境をつくることができるのでしょうか。それが2番目のポイント、『リスクを恐れない組織風土の形成』です。
これは、社員自らが”創造”する意思を持つ社風をつくるということです。他者からの受け売りや過去にとらわれるのではなく、常に未来を見据えた次の一手を考えることで、自ら“創造”する意思を持つ社風をつくることができます。ただし、伝統や経験を活かすことも重要なので、私は9:1の比率が理想だと考えています。9割の仕事は安定して従来通りに取り組み、残りの1割の仕事は、世の中の新たなニーズに応えうるチャレンジを容認する。この1割前後のチャレンジが個々を活かす環境をつくりだしていくのです。
3つ目が『人材への投資』です。
いつの時代も最終的には“人”が意思決定をし、新たな事業やサービスを創造することに変わりはありません。そして、意思決定する人のレベルによって、行動の質は変わり、結果の質も変わっていきます。企業を形成している最大の要素は“人”であり、不確実な世の中に対して立ち向かえるエネルギーを持った組織をつくるためには、社員育成・採用・制度設計など人材への投資を継続的に行う必要があるのです。
VUCA時代となってこれまで以上に組織づくりは複雑化しています。今いる会社が10年後には、全く異なる組織体になっている可能性もあります。今の仕事がなくなっている可能性すらあるでしょう。だからこそ、社員一人ひとりが今の状況を理解し、意識の変革を行うことが大切です。
VUCA時代に負けない組織をつくるためにも、自社の人材レベルをもう一段高めるための施策を考えてみてはいかがでしょうか。
※Volatility(変動性)Uncertainty(不確実性)Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った単語。
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